英国政府は、移民政策の見直しを背景に留学生向け制度の変更を進めており、英国留学を希望する生徒を持つ学校現場でも、その動向に注目が集まっています。
とりわけ注目されているのが、卒業後に引き続き英国内で就労・就職活動ができる「Graduate Route(卒業後ビザ)」の変更です。2025年10月に英国政府が正式に移民規則の変更を公表し、2027年1月1日以降の申請者から新ルールが適用されることが決まりました。
本記事では、この制度変更の内容と、学校の進路指導や海外大学進学支援にどのような影響があるかを整理します。英国留学の魅力は引き続き高く、正確な情報をもとに生徒・保護者への適切な説明ができるよう、ポイントを解説します。
Graduate Route(卒業後ビザ)とは

■ 制度の概要と背景
Graduate Routeは、英国の高等教育機関でバチェラー(学士)・マスター(修士)・博士号を取得した留学生が、卒業後も引き続き英国内で就労または就職活動ができる在留資格です。
2012年に一度廃止されたものの、英国の国際競争力の維持や優秀な海外人材の確保を目的として2021年に再導入されました。雇用主のスポンサーシップが不要なため、卒業後すぐに就職活動を始められる柔軟な制度として、国際学生に広く活用されてきました。
■ これまでの仕組みと人気の理由
これまでの制度では、学士・修士修了者は最長2年間(24か月)、博士号取得者は最長3年間、Graduate Routeビザのもとで英国内に滞在し、業種・スキルレベルを問わず就労することができました。
英国留学の後に現地でのキャリアを積みたいと考える学生にとって、この「卒業後の移行しやすさ」が英国を留学先として選ぶ大きな理由のひとつとなっていました。
今回の制度変更の内容
■ 変更のポイント
・博士号(PhD)取得者:変更なし。引き続き3年間の滞在が認められる
・2026年12月31日以前に申請した場合:従来通り2年間が適用される
・Graduate Route自体は廃止されず、制度として継続
■ 変更の背景
英国政府は2025年5月、移民政策の包括的な見直し方針をまとめた白書「Restoring Control over the Immigration System」を公表しました。
記録的な水準に達した純移民数の削減を目的とし、留学後の在留期間を含めた制度全体の見直しが図られています。
この変更は「18か月あれば、優秀な卒業生はSkilledWorkerビザ(高度技能者ビザ)へ移行できる」という考えに基づいており、Graduate Routeを廃止するのではなく、より迅速な正規就労への移行を促す趣旨で設計されています。
■ 対象となる学生
2027年1月1日以降にGraduate Routeを申請する学士・修士修了者が対象です。
2025年秋学期(9月)に入学する学生は、従来の2年間ビザが適用される可能性が高いとされています。一方、2026年1月以降に入学する学部・修士課程の学生は、新制度の対象となる可能性があります。
なお、学生ビザ申請時の財務証明要件も2025年11月11日より引き上げられており(ロンドン:月£1,529、ロンドン以外:月£1,171)、在学期間中の費用計画にも影響があります。
学校の進路指導に与える影響

■ 英国大学進学希望者への説明
Graduate Routeの滞在期間が24か月から18か月に短縮されることで、卒業後の就職活動に使える時間は6か月短くなります。
この変更を正確に伝えたうえで、「18か月という期間をどう活用するか」という視点で進路指導を行うことが重要です。
就職市場での英国学位の評価は引き続き高く、英国留学そのものの価値が低下したわけではありません。ただし、卒業後のキャリア形成に向けた準備をより早期から行う必要が生じる点を、生徒と保護者に丁寧に伝えることが求められます。
■ 保護者への情報提供
保護者からは「英国留学は不利になったのか」という不安の声が出ることも想定されます。
制度の変更点を正確に整理したうえで、「ビザ期間の短縮はあるが、英国の大学教育の質や国際的評価は変わらない」という点を中心に説明するとよいでしょう。また、留学費用に関わる財務証明要件の変更(2025年11月施行)についても、保護者説明の際にあわせて共有することをお勧めします。
■ 進路指導担当者が理解しておくべきポイント
・制度変更の適用は「2027年1月1日以降の申請」であり、入学時期によって適用ルールが異なる
・Graduate Routeは廃止されず、18か月の在留が引き続き認められる
・PhD取得者は変更の対象外(3年間継続)
・学生ビザの財務証明要件が2025年11月より引き上げられている
・制度の詳細は今後も変更される可能性があり、英国政府・UKCISAの公式情報を定期的に確認することが重要
英国留学の魅力は変わるのか

Graduate Routeの変更はあくまで卒業後の在留期間に関するものであり、英国の大学教育の質や国際的な評価が変わるわけではありません。
■ 世界トップレベルの大学群
Times Higher Education世界大学ランキング2026(2025年10月発表)では、オックスフォード大学が10年連続で世界1位を獲得しています。
QS世界大学ランキング(分野別、2026年版・2026年3月発表)では、オックスフォード大学が「解剖学・生理学」「人類学」「地理」「現代語」の4分野、ケンブリッジ大学が「考古学」「英語・英文学」の2分野でそれぞれ世界1位を獲得しています。
こうした大学の評価は、就職市場における英国学位の競争力を下支えしています。
■ 3年間で学士号取得が可能
英国の学士課程は原則3年間で修了できます。日本の4年制大学と比較して1年短いため、留学費用の総額を抑えやすく、早期にキャリアをスタートできるという利点があります。
■ 国際的な学習環境と就職市場での評価
多様な国籍の学生・教員が集まる国際的な環境での学びは、英語力だけでなく異文化対応力・グローバルな視野の醸成にもつながります。
英国の学位は世界的に高い評価を受けており、国内外の企業・大学院への進学においても強力なバックグラウンドとなります。
制度変更後も、英国留学の本質的な価値——世界水準の教育、充実した学習環境、グローバルなキャリア形成——は変わりません。
今後の進路指導で押さえたいポイント
■ 早期の進路設計と大学選び
Graduate Routeの在留期間が短縮されることで、卒業後のキャリア形成に向けた準備をより早い段階から始める必要があります。
大学のキャリアサポートや就職実績、専攻分野の就職市場との親和性なども踏まえた大学選びを進路指導に組み込むことが効果的です。
■ 大学選びとキャリア設計の一体化
「どの大学を選ぶか」に加えて「卒業後にどのようなキャリアを歩みたいか」をセットで考える指導が、今後の海外大学進学支援においてより重要になります。特にSkilledWorkerビザへの移行を視野に入れるなら、就労先の業種や給与水準に関する情報も早めに共有することが望まれます。
■ 保護者との情報共有
制度変更の情報は保護者にとっても関心が高いテーマです。正確な情報を整理して学校から共有することで、保護者の不安を和らげ、信頼関係を築くことにもつながります。定期的な保護者向け説明会や資料配布の機会を設けることをお勧めします。
■ 海外大学進学希望者へのサポート体制
英国留学を希望する生徒に対しては、出願準備の段階から卒業後のキャリアまでを一貫してサポートできる体制を整えることが理想的です。
専門機関との連携も、学校単独では対応しにくい最新の制度情報や個別相談において大きな力となります。
イクシルからの提言
イクシルでは、海外大学進学を検討する生徒・保護者へのサポートに加え、学校の進路指導担当者向けの情報提供や研修支援も行っています。
英国をはじめとする海外の大学進学・留学に関してご相談がある場合は、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
今回の英国留学制度変更のポイントを整理すると、以下の通りです。
・Graduate Routeは廃止されず、2027年1月以降の申請から学士・修士修了者の滞在期間が24か月→18か月に短縮
・博士号(PhD)取得者は変更なし(3年間継続)
・英国の大学教育の質・国際的評価・就職市場での評価は引き続き高い
・卒業後を見据えた早期のキャリア設計がより重要になる
・制度の詳細は変更が続いており、最新情報の継続的な確認が不可欠
英国留学の魅力は依然として高く、世界トップレベルの教育環境は変わりません。学校として最新の情報を把握しながら、生徒・保護者に適切な進路指導を行うことがこれまで以上に重要になっています。
今後もイクシルでは、海外研修・留学・国際教育に関する最新情報をお届けしてまいります。
本記事の作成にあたり、以下の情報源を参照しました。
■ 英国政府・公的機関
・UK Home Office(Statement of Changes in Immigration Rules(2025年10月14日公表))
・英国政府移民白書(Restoring Control over the Immigration System(2025年5月))
・UKCISA(Student update: Changes to the Student and Graduate Rules)
・House of Commons Library(Changes to UK visa and settlement rules after the 2025 immigration white paper(2026年))
■ 大学・教育機関
・Universities UK International(UK government Immigration White Paper explainer for international agents and counsellors)
・University of Bath(Upcoming changes affecting the Student visa and Graduate visa)
■ 大学ランキング
・Times Higher Education(World University Rankings 2026(Oxford:10年連続世界1位、2025年10月発表))
・QS Quacquarelli Symonds(World University Rankings by Subject 2026(Oxford:4分野首位、Cambridge:2分野首位、2026年3月発表))
■ 制度変更の要点(参考)
・2027年1月1日以降の申請:学士・修士修了者は24か月→18か月
・博士号(PhD)取得者:変更なし(3年間)
・2026年12月31日以前の申請:従来通り24か月が適用
・学生ビザ財務証明要件:2025年11月11日より ロンドン£1,529/月、ロンドン以外£1,171/月に引き上げ
※ 制度の詳細は今後も変更される可能性があります。最新情報は英国政府(GOV.UK)またはUKCISAの公式ページでご確認ください。
※ 本記事の情報は2026年6月現在のものです。
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